鋼材の解説
鋼(炭素鋼)とは・・・
鉄に炭素が0.1~2.7%含まれたものです。(0.1%以下は軟鉄、2.7%以上は鋳鉄といいます)
◎鋼は【焼入れ】すると硬くなりますが軟鉄は焼き入れできないので本質的には別の金属です。
◎鋳鉄は溶融点が低く鋼よりもろいので、刃物の材料にはなりません。
※焼き入れが出来るのは鋼だけで他の金属は一切出来ません。
◎鉄・鋼・軟鉄・鋳鉄は同じようにサビるし、磁石にもつき、比重もほぼかわらず、 見た目には同じ金属なので、「てつ」といって区別していないかもしれませんが、 それぞれ別のものです。
ステンレス鋼とは・・・
◎鉄に何か別の金属を合金すればサビなくなるだろうという考えはだいぶ以前からありました。 1913年イギリスの科学者により鉄に0.24%の炭素とクロームを13%ぐらい加えた飛躍的にサビにくく なる金属が発明されました。
◎すなわち、ステンレス鋼の始まりは偶然にも刃物に使えるステンレス鋼の発明が発端となりました。 炭素が添加されているので【焼き入れ】が可能です。
この金属は鉄と炭素とクロームの合金でマルテンサイト系ステンレス・スチールと言います。
焼き入れ性があります。
◎その後間もなく炭素量が低いほど耐蝕性が高いことが判り、炭素を含まない13クロームステンレスが 作られました。
この金属は鉄とクロームの合金でフェライト系ステンレス・スチールと言います。
焼き入れ性はありません。
◎クロームが13%ぐらい添加されると、表面に薄く透明な酸化クロームの皮膜ができ、これがサビを 防ぎます。
◎この膜はヤスリなどでこすったりして万一こわされてもすぐに再生します。
◎ステンレスといっても刃物用の場合は、サビることがあるという事を覚えておいて下さい。
◎普通の鉄や鋼に比べれば比較にならぬほどサビにくいのです。
※台所の流しやスプーンなどの食器に使われる18-8ステンレスはクロームだけでなくニッケルも 加えたもので、磁石に付かず、刃物用ステンレスよりはるかにサビにくいのですが焼き入れできないので刃物には 使えない別のものです。
この金属は鉄とクロームとニッケルの合金でオーステナイト系ステンレス・スチールと言います。
磁石に付かず、焼き入れ性はありません。
粉末合金鋼・コスミックスチールとは・・・
◎熔解した特殊鋼をガスアトマイズ装置の中で高圧の窒素ガスを吹き付け、赤い霧状にして 急冷すると鋼の微粒子(直径約100ミクロンくらいの球状)になります。
◎この鋼の粉末を軟鉄製の缶に詰込み、真空に脱気処理後密封し、熱間静水圧プレス(HIP)装置にかけて 約1000℃、1000気圧の高温、高圧で処理すると鋼の粉末は熔解することなく固まって鋼塊になります。
後は鍛造し、ロール圧延して鋼板にします。
◎更に熱間でプレス型抜きし、焼き入れ後サブゼロ処理(-75℃の深冷処理)と焼き戻しを繰り返すという 難しい熱処理工程や何種類もの研磨工程を経てようやく庖丁の完成に至ります。
◎ステンレスではありませんが、高クロームのためサビにくく、硬度も驚異的に高く、靭性も高い理想の刃物鋼です。
◎サビにくく、切味が驚くほど長持ちし、刃コボレしにくく研ぎやすい、現在最新で最高の鋼材です。
粉末鋼の製造工程
A | 特殊鋼には硬くて脆く粗い雑な炭化物と呼ばれる組織が存在する。 高周波溶解炉にて溶解させた特殊鋼に窒素ガスを吹き付け霧状にして急冷。 |
B | 特殊鋼の微粒子がたまる。 |
C | 特殊鋼の粉末を隙間なく充填するためハンマーでたたく。その後真空ポンプに接地して缶の中を真空にし、密封する。 |
D | HIP装置(熱間静水圧プレス)による重要な工程 約1000気圧、1000℃の高圧、高温で圧縮すると特殊鋼の粉末は溶解することなく、鋼塊となる。つまり、溶解から徐々に凝固する過程を除いたので、炭化物の偏折が生じない。 |
E | 粉末鋼をさらに熱間(700℃〜800℃)でプレス型抜きし高温焼き入れ後サブゼロ処理(ー75℃の深冷処理)と焼き戻しを繰り返す複雑な熱処理(通常の刃物鋼と大きく異なる)工程や研磨工程などを経てコスミック包丁が完成する。 |